ラフノート

イントロはストラトから


 刺巻奏太は古びた大きな弦楽器の奥から出てきた、より一層古ぼけたケースのロックをそっと外した。


「おい、開けていいのか? もし本当に呪いのギターが入ってたら」


 奏太のすぐ後ろで、狼狽した声が上がる。まさか。七不思議なんてただの都市伝説で迷信だ。呪いのギターなんてあるわけがない。そう理解しているはずなのに、奏太は心の中で何度もつぶやく。

 
「そのときは、願ったり叶ったりだよ。俺が使うって」


 そんな風に軽口を吐き出しても、鼓動のテンポはぐんぐん上がっていく。音楽準備室には夏の暑さを吹き飛ばすクーラーが効いているが、今はその冷風が状況のおどろおどろしさを強調していた。冷や汗が止まらない。心臓に水でも注がれているみたいだ。


「……開けるぞ?」


 全てのロックを外し終え、蓋を固定していたものがなくなる。長方形の箱から少しだけ、匂いのようなものが漏れた。


 一応の最終確認のために、奏太は振り返る。三人はみな、それぞれ期待と不安が入り混じったような顔をしていた。




 ――無言は肯定と受けとった。ゆっくりと手をかけ、一気に蓋を開ける。




















 期待通りか、期待以上か、あるいは予想に反してか――。
 その中身から、軽音部の夏の怪奇譚は始まった。


***